今、世界で「ikigai」(生きがい)という言葉が注目されています。

この言葉が注目されたきっかけは、ダン・ベットナーが世界の長寿地域(Blue Zone)を調査して、その共通因子を見出したことに始まります。

100歳を超えて元気な老人たちは皆「現役」で、毎日張りを持って生活をしている。「毎朝起きる理由がある」ことがわかりました。
ベットナーはこれを日本のBlue Zoneである沖縄で聞いた言葉「ikigai(生きがい)」に感銘を受けて、この言葉を本(Blue Zone)で紹介し、またTEDスピーチや講演でこの言葉を広げたのです。
 
 

 
 

ikigaiとPurposeの違いについて

実はこの「ikigai」(生きがい)にあたる英語の言葉はなく、一番近いのがフランス語のレゾン・デートル(存在意義)であると言われています。
英語で最も近いのがPurpose(目標や目的)ですが、この両者には根本的に違う部分もあります。
下図で表されているように、Purposeは、将来ら未来に起点をおいた言葉。
将来どうなっていたいか、未来の「理想の姿」を描くのがPurposeです。

一方のikigai(生きがい)は、現在(今)に起点をおいています。「朝起きる理由」と上述したように、今日何をするか、今がどんな状態か、といったことに視点を向け、その上で将来や未来を考えるというニュアンスです。


 
 
本来はPurposeとikigai、どちらが正しいのかとか優れているのかということはありません。やりたいことや将来なりたいこと(Purpose)があるのなら、これを追求したり自分の中で深めたりしていくことは、とても良いことだと思います。
そしてそれがikigai(生きがい)に繋がるのなら、なお素晴らしいことでしょう。

ただ今の社会は、「押し付けられたPurpose」がちょっと多すぎる気がします。
学校に行けば、テストで良い成績を目指さなければいけない。一流大学や一流企業に入れるよう頑張らなければいけない。クラブ活動でも試合の勝利が何より大事であり、そのため監督やコーチの言うことは絶対服従。
社会に出れば、会社が定めた目標(ノルマ)を果たすため夜遅くまで残業の毎日。
休みの日は、スキルや能力を高めるためセミナーや資格試験勉強でゆっくりする暇もない。

そうしてPurposeが達成されたら、また次のPurposeが待っていたりします。

そんな社会だからこそ<今ここ>を大事にするikigaiがあらためて注目されるようになったのかもしれません。

ikigaiワークショップで注意したいこと

先日、コミュニティデザイナーの山崎亮さんが中心になって立ち上げられた「コミュニティデザイン塾」で、「ikigaiについて学ぶ寺子屋」を開催しました。
ここでは多くの「ikigaiワーク」で活用されている「ikigaiベン図」を使いました。
 
 

 
 
この「ikigaiベン図」は、「好きなこと」「得意なこと」「求められていること」「稼ぐこと」この4つをそれぞれ考え、その重なるところ(交点)に「ikigai」があるというものです。
2014年にMark Winnが書いたブログ「What is ikigai?」で紹介されてから様々なところで引用されるようになりました。
沖縄のBlue Zone地域を取材したガルシアとミラージェスの「ikigai」にも裏表紙でこの図が描かれているほどです。

しかし、実際にワークショップをやってみて実感したのですが、実際にこのベン図を使ってワークショップなどをやる際には、取り扱いに注意が必要です。

ワークショップをやる側の心理として、参加者の方には知識を身に着けてもらいたい、能力やスキルを上げてもらいたい、と考えがちです。

このようなベン図を使ってワークショップをやるときもおそらく、できるならたくさん埋めてもらいたい、そして重なる場所(交点)にあたるものを見つけて、あるいはそれを目指してもらいたいと思うのではないでしょうか。
あるいはない(足りない)ものがあったら、それを「どうやったら充足できるか考えましょう」とか言いがちですよね?

これは実はPurpose的な発想です。

考えてみてほしいのですが、沖縄で100歳を超えて幸せな人生を送っている人は、「能力やスキルをあげよう」とか、「人が何を求めているか追求しよう」とか、「もっと稼ごう」とか考えてきたのでしょうか?

だから「ikigaiベン図」を考えるときも、数やレベルを気にする必要は一切ないと思います。
1人から求められていることと、100人から求められていることにその価値の上下はありませんし、能力やスキルもそのレベルは関係ありません。
好きなことが、どのくらい好きなのかもそれぞれで良いと思いますし、稼ぐ金額の多寡はそれこそikigaiと全く関係ないのです。

ではこの「ベン図」で何をするのかというと、自分の「今の状態」を確認する、あるいは可視化してみるために書いてみるという作業をします。
そして、それぞれ出した項目が他のものとどんな関係があるのか、あるいはありそうか考えてみる。

そうすることによる気づきや発見が、ikigaiを考えるあるいは見つけるに当たって最も大事なことと言えるのだろうと思います。
 

交点(中央)を気にするのではなく、横の繋がりに目を向ける。