2020年は5Gのサービス開始、東京オリンピックなどのイベントがあり、もともと「テレワーク元年」になると言われていましたが、今回の新型コロナウイルス禍で、一気に広がりました。

こういった状況に答えるように、WEBやFacebookなどでもテレワークのやり方などについての記事も多く見られるようになりました。
ただそれらの記事は、動画やチャットなどのツールの設定や使い方、活用方法、あるいはセキュリティなどの注意事項といった内容などが多く、そもそも「テレワークでどうやって仕事を進めていくか」ということに関して書かれているのはあまり多くないようです。

今日(3月4日)の日経朝刊でも、「電話するほどでもない細かなコミュニケーションが取りづらい。若手が勝手に判断してどこかでミスが起きないか」心配する上司の声が紹介されています。
 

 
業務内容にもよりますが、テレワークはうまくやれば、出社して仕事する以上に効率よく仕事ができる手法です。「働き方改革」が叫ばれている現在、今回のコロナ禍が収まろうとも今後その必要性は増えることはあっても減ることはないでしょう。

テレワークに関して、動画やチャット等のツールの活用法に関しては是非様々なサイトや記事から情報を得ていただくとして、ここでは仕事の進め方について述べてみたいと思います。

ここで提案するのは、アジャイル開発でおなじみの「スクラム」のやり方を取り入れる方法です。
スクラムは、もともと野中郁次郎一橋大名誉教授が1980年代の日本企業の強さを分析する中で生まれた手法で、それをジェフ・サザーランドがアジャイル開発の手法として体系化したものです。
システム開発の手法として知られていますが、マーケティングなど他の業務や組織開発、学校、政府に至るまで、個人や社会が日常的に使用するあらゆるものに使用されています。

スクラムでは「チーム単位」で仕事をします。1チーム数名で多くても9名を超えないようにします。(その場合はチームを分割します)そしてスプリントと呼ばれる「タイムボックス」を定めて、その中で仕事を回していきます。

スクラムの3本柱

スクラムの方法論に入る前にスクラムの3本柱について述べます。「透明性」「検査」「適応」です。この3本柱がないと、いくら方法論をなぞってもうまくいきません。

透明性
成果に対する責任が見える化(可視化)され、現状や問題点を共通理解すること。

検査
見える化(可視化)により問題点を見つけること。

適応
問題に対し、改善策を考えて調整を行うこと。

この「3つの柱」を実現させるための方法が、次に述べるような「スクラムの様々な手法」になります。

スクラム方式の仕事の進め方

ここでは1週間を1スプリントとして考えます。(実際には仕事内容に応じ1週間~1ヶ月の間で設定します。)

バックログ
チームの仕事のタスクで未着手のものを「バックログ」といいます。
スクラムでは、このバックログの「見える化」をまず行います。これを「バックログリファインメント」と呼んでいます。
要は、「今週1週間のタスクをチームで共有しましょう」ということです。今週の分の「バックログリファインメント」は前の週に行い、「振り返り(後述)」のあとに確定させます。

そしていちばん大事なことは「バックログは優先順位の高い順番で並べる」ということです。仕事はチームにとって重要度の高い順から取り掛かっていくことが大事。重要度は常に変動しますので、翌週分のバックログでは、状況に応じて並び替えたり、新たなタスクを付け加えたりします。

そしてタスクの進捗状況は、下記のようなホワイトボード(チームリーダーが管理するか、あるいはオンラインでも便利なツールがあります)で見える化します。
タスクの大きさも重要で、だいたい1人が数時間~1日に終わる作業を1タスクとします。つまり大きいものは分解する必要があります。この「タスクばらし」が「バックログリファインメント」の中でも重要な作業になります。
「ばらした後」のタスクを優先順位の高い順にボードの「バックログ」の欄に貼っていきます。

そしてタスクに着手、あるいは完了時にリアルタイムで反映させていきます。
 

 
このタスクは上記のように重要順に並んでいますので、もし上の方の(重要な)タスクが「未着手」だったり、「着手中」のまま動かなかったりすれば、何か問題があることがすぐに可視化できるようになっています。
また一番下は、何か緊急事態が起きてすぐに対処しなければならないときの為の「緊急レーン」です。

朝会
毎日一度チームメンバーが集まるミーティングを行います。朝一に行うことが多いので、「朝会」と呼ばれます。必ずしも朝でなくても構いませんが、毎日の時間を統一しておくことが重要です。
普段はメールやチャットの共有で業務を進める場合でも、朝会(及び後述の「振り返り」)ではZoomなどの動画ツールを使ってリアルタイムに情報共有します。
朝会で各自が話すことは次の3点です。

「私が昨日やったことは何か?」
「私が今日やることは何か?」
「障害となることを目撃したか?」

いわゆる「朝礼」とごっちゃにされることが多いですが、朝会は「情報共有」の場であって、「上司への個人の進捗状況の報告」や「問題点の解決のための話し合い」の場ではありません。もちろん「リーダーによる説教」をするところでもありません。(そういうのは別のときに個別でやってください。)

朝会は15分程度で終わらせます。問題点があってそれ以上掛かりそうなときや、議論をもっと掘り下げたいときは、それに該当するメンバーのみで朝会後に別のミーティングを開催します。スクラムではこれを「パーキングロット(駐車場)に入れる」といいます。

振り返り
週の最後(この例では金曜午後)に、今週の振り返りを行います。
良かったこと、悪かったこと、今後改善していきたいことなどを話し合います。
日本企業でアジャイル開発を採用している現場では、KPTのフレームワークがよく使われているようです。

ホワイトボードなどに3つの区画をつくって、Keep(継続していきたいこと)、Problem(発生した問題点)、Try(今後試していきたいこと)を話し合ってまとめていきます。
このシートは保管しておいて、Problemの改善やTryの項目の中で重要度の高いものを翌週のバックログにあげます。
このようにして今週の振り返りが一通り済んだら、次週のバックログ(仕事のタスク)を定め、優先順位付けを行います。
なお、振り返りにかける時間は、週1の場合、翌週の準備(バックログリファインメント)含めて、長くても1時間半~2時間くらいで終わらせるようにします。

これで1週間の活動(スプリント)は終了です。以上のことを毎週回していきます。

スクラムチームは自己組織化する

スクラムのチームは自律型であり自己組織化するチームです。
これができるのは、スクラム(・・に限らずアジャイル開発)ではタスクベースの管理を行い、また業務が可視化されているので、「人の管理」をあまり必要としないからです。
したがって、上記の新聞記事のような「若手が勝手に判断してどこかでミスが起きないか」という心配を上司がする必要がなくなります。

もちろんアジャイルやスクラムで仕事をすればミスが無くなるという意味ではありません。仮にミスや失敗があったとしても、タスクボードや「朝会」の情報共有でわかりますので、多くても1人日の損失で済みます。
そのためには、「チーム単位」で、「今週のバックログをやっつける」ことを目標とする事が大事です。ラグビーやサッカーでは個々の華麗なプレーも評価されますが、何よりもそれを得点に結びつけて勝利することがチームとして評価されるのと同じです。

ラグビーの「スクラム」は、敵味方のフォワードが潰し合って、その間に別のメンバー(バックス)がボールを前に運んだり、トライ(ゴール)を決めてもらおうという「他者貢献」的な技です。

この「スクラム」の思考でテレワークを行えば、きっとよい成果が生まれると思います。