日本の生産性は世界20位。一人当りGDPは26位。

経産省が2018年12月に公表した、「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX 推進ガイドライン)」によれば、DXの定義は「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」となっています。

「FA」「インターネット対応」「デジタル化」「ICT」「IOT」、今までもそして現在もこのような言葉はたくさんありました。「DX」もそういったバズワードのひとつ・・・と思っていると、大事なことを見失ってしまう恐れがあります。

いや、すでに日本は見失いつつあるように見えます。

今回、DXが注目されているのは「生産性」「日本企業の競争力」という課題が背景にあります。

 
上図から明らかなように、日本の労働生産性は世界の中で20位。我々から見て「あくせく働いていない」イメージのあるイタリアやスペインより低いのです。
特に高度成長期が終わってから、ほとんど伸びていないことがわかります。

中でも2000年前後の「IT革命」以降、パソコンやインターネットなど様々なITシステムが導入されたにもかかわらず、労働生産性の伸び率は1%にも満たない。その間に、多くの国に日本は追い抜かされていきました。

私たちはいまだ、自分の国のことを「世界第三位の経済大国」と認識していますが、これは単に人口が多いことと、労働者の長時間労働に支えられているのにすぎません。
1988年には世界2位だった1人当たりのGDPは2018年には世界26位にまで落ち込みました。これは米国の6割で、ノルウェーの半分以下なのです。

これを「国や政府のせいだ」という人もいるでしょうし、それも外れていないとは思いますが、最も責任あるのは、実際に経済を担ってきたセクターの責任者たち、つまり企業経営者達であることは言うまでもありません。
世界は変わっているのに、いまだ「モノづくり幻想」「高度成長期幻想」に浸って何も変えてこなかった経営者。「日本の労働者は勤勉で優秀」という「幻想」に労使ともに惑わされた結果が、世界でもトップクラスの長時間労働時間で疲れ切って、OECD最下位クラスの労働生産性しか上げられず、私たちは欧米諸国の半分の所得しか得られない、という事実なのです。
 
(労働組合や野党の責任も小さくないと思います。経営者は儲けすぎだの内部留保を給与にだの、未だ高度成長期を引きずっていて、企業は儲けて「いない」のが現実なのをみようとしないのは同罪です。)

なぜ日本の経営者総退陣の声があがらないのか不思議

特にIT革命、デジタル革命が企業に浸透した2005年以降が酷い。インターネット高速通信だのクラウドだのスマートフォンだのが普及し、統合業務システム(ERP)が企業内を効率化し、サプライチェーン・マネジメント・システムが企業同士をつなぎ、AIやIOTの普及も進み始めている。
これだけのことを行っておいて、まったくと言っていいほど生産性が上がらないのは逆に不思議に思わないでしょうか?

米国はといえば、1990年代終わりにはいつ倒産してもおかしくなかったアップルが、たった10年ちょっとで世界一の時価総額に。Google、Amazonは言うに及ばず、2010年ごろにはオワコン状態だったマイクロソフトもナディラの改革で、たった数年で不死鳥のごとくこれも時価総額世界一企業に。

なぜ日本だけが。それもこれだけ真面目で長時間労働もいとわない労働者を抱えており、またiPhoneの部品の多くが日本製だったり、(日韓の紛争で明らかになったように)半導体製造に欠かせない高純度の化学製品を独占していることからもわかるように、技術レベルでは今なお世界トップレベルなのに。

ラグビーでもサッカーでも、世界トップレベルの選手をそろえて、十分な技術サポートもあって、それでも全く勝てないとしたら、これは監督など首脳の総退陣!とファンもマスコミも大騒ぎとなる。

でも大企業の経営層はまったくそんなことはなく、ゴーンの給料がもらいすぎだの正直庶民にはどうでもいいことが、国家レベルの大事件になるのが現実です。

なぜIT導入は企業に何の効果もなかったのか

なぜ、2000年以降のIT革命がまったく日本企業だけに効果がなかったかといえば、答えはある意味簡単で、日本の経営者は、ITを単なる道具、人がやる作業の省力化手段、コスト削減手段としてしか見てないからです。
米国や中国、あるいは東南アジアでさえITやデジタルによってさまざまな価値が新たに生まれてきていますが、日本はサーバやPC、スマホなどの端末、高速回線などインフラはこれまた世界トップレベルに普及しているのに、まったくと言っていいほど「ビジネスの新たな価値」を生んでいない。

企業トップは、IT化で、どれだけ効率化要するに省力化や節約ができるのか。ひどいところでは、どれだけ人件費減らせるのか、ということしか考えてこなかった結果が現在です。

そしてDXブームと言いつつ、実際に普及が広がって、これまたバズワード化しているRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)ブーム。
たしかに、RPAが普及すれば、省力化になって、残業は減るかもしれません。でもそれで何が生まれるというのでしょうか? 仮に時間が浮いたとして何を生もうとしているのでしょうか?

今のIT担当大臣に忖度したような、自動ハンコ押印機って、もう冗談にしか思えませんが、おそらくそれなりに売れるんでしょうね。

組織改革なしのDXは何をトランスフォーメーションするのか?

今更ですが、ITにしろDXにしろ、本来は新たな価値を生むための装置です。実際上述のように米国そして曲がりなりにも中国やアジア諸国もそれぞれ価値を生み出してきています。

日本だけができないのは、20世紀の社会体制、組織体制を変えないでことを当たろうとしているからです。成功体験が新たな変革を邪魔するというのはよく聞くと思いますが、まさにその状態。

明治維新の時にもし当時の政治家が、身分制度や刀やちょんまげ、そのほかの習慣を「これは日本古来の伝統だから」と残したまま国際化や外国の技術導入を進めようとしていたらどうなっていたでしょうか?

自動ハンコ機をみるように、今の日本はまさにその状態なのです。
 
組織に技術を変えて(カスタマイズして)合わせるのではなく、技術に組織を合わせる。組織変革をする。日本古来のハンコ文化というのは明治維新の刀なんだということ。(別にハンコに恨みはないですがわかりやすい事例なので・・・)、そして今の社内稟議制度をはじめとする日本の企業制度は「士農工商」なんだということをまず私たちが「自覚」することができないと、「日本の日暮れ」はますます暗くなる一方だと思います。

ただ、最後まで読んでいただいたお礼に希望を届けると。。
周りがこういう状況ですから、「組織変革を伴ったDX」ができれば、一躍勝ち組になれる。混乱期に一人で事を成し遂げた坂本龍馬、それを継いで三菱財閥を創った岩崎弥太郎になれるのはあなたかもしれません。