引き寄せの法則と催眠術の元祖は同じ

心に強くイメージしたことは実現する。いわゆる「引き寄せの法則」は、19世紀なかばに生まれたキリスト教の異端宗派「ニューソート」の教義・思想です。
ニューソートは人類の原罪やイエス・キリストの神性を否定し、宇宙は神で満ちた存在である。誰でも心にイメージすることにより病気や貧困から解放されると唱えています。
ニューソートの教義に影響を与えたのは、三位一体を否定し火あぶりの刑に処せられたミカエル・セルヴェトゥス、霊界に行ったり他の惑星に行き、宇宙人と交流したとするエマニュエル・スウェデンボルグのキリスト教の解釈ですが、ニューソートの立ち上げに直接繋がったのは、フランツ・メスメルです。
メスメルは、催眠術や催眠療法の元祖として知られています。

メスメルの催眠療法

メスメルは、宇宙と人間はつながっているとするパラケルススの影響を受け、それにニュートンの便有引力の法則理論をつけた「宇宙的流体」を活用して、人間を治療するという医術を行っていました。
彼は宇宙的流体を伝達する体内の力を「動物磁気」と名付けました。
彼の理論はフランスの審査委員会で否定され、パリやウィーンを追われてしまいます。

メスメルは動物磁気の正体についてそれ以上の理論を持ちませんでしたが、彼の弟子のマクシム・ド・ピュイぜキュール伯爵は、心霊治療であると考えました。霊媒が治療によって磁化されると、その霊媒は人々の思考を読み取り、病人や患者の症状が分析されて、どのような病気に対しても薬剤や治療薬が処方されるのです。

ピュイゼギールのこの「発見」は、ヨーロッパで、後にはアメリカまで広がり、一群の治療家たちがこの新しい治療技術を取り入れました。

メスメリズムを近代科学にしたジェイムズ・ブレイド

イギリスの医師ジェイムズ・ブレイドはメスメリズムを使った興行(現在で言う催眠ショー)を見て衝撃を受けます。
彼はすぐにこのメスメリズムは、動物磁気や霊媒の力ではなく、心理的生理的な現象であると見抜き、自分でも確かめます。
そしてそれまでメスメリズムとか動物磁気と呼ばれていたものに「催眠(hypnosis)」という名前をつけたのです。
ブレイドのお陰で、催眠は超科学的なものではなく、心理学や医学であることが広く理解され、科学の領域に引き寄せられました。
今日、ブレイドの名は「催眠術の父」と呼ばれるようになります。ミルトン・エリクソンは「彼は催眠トランスの現象やその導入技術を確立し『催眠は暗示である』ことを明らかにした。これは精神学歴史の最初の成果である」と称しました。

メスメリズムを宗教にしたフィニアス・クインビー

一方で、ピュイぜキュールの弟子であるデュ・コマンはアメリカに渡り、この地でメスメリズムを広めます。
メスメルの治療を受けた中のひとりが、時計職人のフィニアス・パークハースト・クインビーでした。
彼は自分の病気がこのメスメリズムにより治癒したのを見て、自分自身治療家として活動します。
彼はピュイぜキュールの理論を発展(?)させて、心は霊的原質であると確信するようになります。

「もし私が何かをほんとうに信じていれば、意識していようがいまいが、その結果が生じるであろう。それはある種の個体へと凝縮し、「腫瘍」と呼ばれる名称を持ったりするわけだが、一方また異なる方向性のもとでは、同じその力が腫瘍を溶解、消失させるのであろう」

後の、ニューソートの布教家や伝道者、あるいは影響を受けた思想家たちの原点がこの言葉になります。

メスメリズムはヨーロッパでは医学、心理学と結びつき、催眠、催眠術となりましたが、米国ではセルヴェトゥス、スウェデンボルグの宗教思想と結びつき、それが「思考は現実化する」「引き寄せの法則」となりました。

現在にも受け継がれている著名なニューソートの伝道者や影響を受けた思想家には、1897年に「幸福はあなたの心に」を出版したラルフ・ウォルドー・トライン、1912年に「ザ・マスターキー」を著したチャールズ・ハーネル。ハーネルの本を読み自己啓発のスクールを立ち上げたナポレオン・ヒル。そして自身ニューソート派ディヴァイン・サイエンス教会の牧師であり「眠りながら成功する」シリーズを40冊以上書いたジョセフ・マーフィーがいて、多くの人に影響をあたえています。