今のオンラインビジネス環境は「高速道路出口の渋滞」

コロナ禍で、オンラインビジネス、インターネットビジネスに再び注目が集まっています。
「再び」と言ったのは、2008年のリーマンショックに始まる不況の頃にも、オンラインビジネスやネットビジネスのブームがありました。

私自身のことを言えば、2000年頃からインターネットマーケティングの会社で、Eコマースなどオンラインビジネス事業の立ち上げをいくつか行い、関連会社の社長を務めた後に独立し、インターネットマーケティング事業や起業支援のコンサルティング会社を立ち上げるなど、この業界に関わり続けてきました。(その後東日本大震災をきっかけに、ソーシャルビジネスや街づくり、組織開発なども手掛けるようになって今に至ります。)

オンラインショッピング
 
オンラインビジネスやEコマースの業界は、この10年大きく進歩しました。端末はPCからスマホが主流となり、SNSが普及し、クラウドやビッグデータの活用が浸透しました。
また、以前は「オンラインビジネスを手掛ける」「Eコマースを始める」のはシステム構築などで高いハードルがありましたが、今では無料や低料金で始められるASPや決済手段も多くあり、ハードルも低くなっています。

しかし便利なツールが増えて、ハードルが低くなったからオンラインビジネス成功の確率も上がったかというと、話は逆で、いわゆる「高速道路出口の渋滞」が起きてしまっていて、うまく行かないところが増えているのが現状です。

「高速道路出口の渋滞」というのは、今のオンラインビジネス、インターネットビジネスの状況を表している言葉です。便利な高速道路が造られて快適に走れる環境ができても、そこにたくさんの車が集まってしまい、出口の料金所で大渋滞が起きてしまっている状態に例えたものです。

オンラインビジネス成功の3つの鉄則とは

私が「オンラインビジネス、インターネットビジネス業界」に入ったのは上にも書いたように1999年で、いわゆる「ネットバブル」「ビットバレー」のど真ん中でした。その後何度ものオンラインビジネスの盛衰を見てきたり、時には自身で関わったりしてきました。

その20年間の経験で得たオンラインビジネスの成功の鍵は、次の3つの鉄則に則っているか否かで決まることもわかりました。
これは個人であるか法人であるか。あるいは規模の大小を問わず変わらないものです。
その3つとは「意味(Meaning)」「魅力(Attraction)」「アクセス(Access)」の3つです。

オンラインビジネスでは、この3つはどれ一つが欠けても成功しませんし、またそれぞれの要素を高めるためには、他の2つの要素が必要であるという関係でもあります。
例えば質の高い「アクセス」を増やすには「意味」と「魅力」が欠かせないし、「魅力」を高めるには「意味」に共感してもらい、また「アクセス」を高めることで評判に繋げることが欠かせない。「意味」も商品やサービスの「魅力」、顧客とのつながりである「アクセス」があって初めて定めることが可能になるものです。

オンラインビジネス成功の3つの鉄則

「意味」があって初めて共感を得ることができる

「意味」とは、そこに商品やサービスが存在する意味であり、その商品やサービスを売ることの意味です。
「目的(Purpose)」と言っても同じですが、日本語で「目的」というと、「売上目標」とか「お金を儲けること」と捉えられがちなので、もっと広い概念の「意味」としています。
つまり「なぜそのビジネスをしているのか」「なぜその商品やサービスを売っているのか」の意味です。

その「意味」があって初めて、顧客は「共感」し、他ではないあなたのサイトから購入してくれるようになります。
現在は、どんな商品やサービスであっても、機能や値段で差別化することは難しい。また生活必需品はコンビニを始め身近なところでいくらでも購入ができる。
だから「共感消費」といった言葉が語られるのですが、「共感」は商品やサービスそのものではなく、その後ろにあるあなた自身の想いに共感します。

これは「アート思考」にも通じる考え方ですが、アーティストが生み出す絵画や音楽という作品は、そのもの自体は紙の上に絵の具を塗ったものであったり、言葉の羅列に抑揚や楽器の音を加えたものに過ぎません。
しかし私たちは、アーティストの表現の背後にある「想い」に共感して、時にはものすごい値段をつけたりすることもあるわけです。

この場合、私たちは額縁に入った紙や、ポリカーボネートの円盤に価値を感じているのではなくて、その後ろのアーティストの「意味」に対して値段をつけているのですね。

ここまで述べたことは、ビジネス全般に言えることですが、オンラインの場合それと併せて「なぜオンラインで届けるのか」という意味を考えることが大事です。

売り主の都合(「お店で売れなくなったのでオンライン販売をすることにした。」)などという意味を聞かされても、だれも共感しないし、当然それで売れるようになりません。
この「オンラインにする意味」を考えられるかどうかが、オンラインビジネスの成功を左右すると言っても過言ではありません。

Amazonは、オンラインにすることで、お店の在庫に左右されず「ありとあらゆる本」を揃えることを目指しました。ベストセラーはもちろん、普通の本屋ではスペースの都合で扱えないマイナーな本でも、どこにいても「ワンクリック」で購入ができる。それがAmazonの「意味」です。後付けで「ロングテール戦略」と呼ばれてはいますが、もともとは創業時からのジェフ・ベゾスのビジネスの「意味」だったわけです。

参考記事
システム思考がアマゾンを世界一のECサイトにした

商品やサービスの価値が問われる「魅力」

「魅力」のない商品は売れません。どうすれば魅力は生まれてくるのでしょうか?
すぐに思いつくのは、機能や性能が高いことやコストパフォーマンスがいいことです。
ただし、今の日本ではどの商品やサービスも一定以上であり、ここで差をつけるのは簡単ではないことも事実です。

「魅力」というと機能や値段のことばかり考えがちですが、本来の「魅力」とは、売る人と顧客の「意味」が交差するところに生まれます。

顧客が持つ「意味」というのは、その顧客が「やりたいこと」「在りたいこと」です。
その顧客が「やりたいこと」を、あなたの「やりたいこと」によって手助けをする事ができる。これがあなたの商品やサービスの「価値」であり「魅力」です。

具合的にどう「魅力づくり」をするかというと、次のいくつかの手法の組み合わせになるかと思います。

まず顧客の様々なデータ(例えばユーザーインビューなど)を定性データに変える。そのようにして顧客の「意味」を知ることができるようになります。ここではシステム思考の因果ループやGTA(Grounded Theory Approach)あるいはKJ法、データドリブンの手法を使うのが有効です。

それをベースにして「顧客価値連鎖分析(CVCA)」で、顧客とあなたとの間の「価値のつながり」を可視化し、商品やサービスの「意味」を探索したり、その「強み」すなわち「魅力」を見つけてオンラインビジネスに繋げる「バリューグラフ」を作成していく。

以上のような手法で、オンラインビジネスならではの「魅力的な」商品やサービスづくりが可能になると思います。(それぞれの手法の詳細については下記記事を参考にしてください。)

参考記事
データドリブン経営ブームの落とし穴
CVCAで独自のビジネスモデルを構築する
コロナ禍でビジネスモデルを転換するための方法論(バリューグラフについて解説)

アクセスは量より質

オンラインビジネスで、おそらくもっとも関心のあるテーマは、「どうやってアクセスを増やすか」ということではないでしょうか。

単純にアクセスを増やしたいだけなら、様々なSNSをやって、そこに世間の関心の高いテーマ(特に芸能ネタ)について書いたり、あるいは欲求を刺戟するコンテンツ(具体的には食欲:グルメ情報や料理の写真、性欲:可愛い女性の写真・恋愛やエロスネタ)を集中的に載せればアクセスは簡単に集まります。

しかし、それが結果に結びつくかというと、それがビジネスに合わない限り購入に結びつくことは100%ありません。

リアルなビジネスの場合、往来の多い街角にお店を出せば、一見の客がお店に来て物を買ってくれたりすることがあります。
その発想で、オンラインでもとりあえずアクセスをたくさん集めればそのうち一部でも商品やサービスに興味を持って購入してくれるかもしれないと考えたくなりますが、残念ながらそういうことはオンラインビジネスではほとんど起こりません。

このことは昔、ポータルサイトとEコマースを運営していたときに身を持って知りました。

とにかくまずアクセスを増やしてそこから収益につなげるという考え方は、自分自身に売るもの(商品やサービス)が無く、アドセンスなどのブログの広告収入やアフィリエイトで収入を得るための手法です。
このような目的のための集客手法と、自社のビジネスをオンラインで売るための集客手法はまったく異なります。(SNSやネット広告などでよく見かける集客方法とか集客セミナーでは、前者の目的の為の手法も多いので、ご自身のビジネスモデルに合うか見極める必要があります。)

自分のビジネスをオンラインで展開する場合は、上記の「意味」「魅力」にあわないコンテンツは「載せてはいけない」のが鉄則です。
アクセス数という量が大事ではないとは言いませんが、何より「質」、つまりあなたの「意味」や「魅力」に関心を持ってくれる人をどのくらい集めることできるかが鍵になります。

SNSをビジネスに使う場合の注意点

Twitter、Facebook、Instagram、LineなどのSNSは瞬発的な伝達力があります。
この伝達力を使って物を売りたいと考えがちですが、一部を除いて基本的にSNSで物やサービスを販売するのは違反だし、そもそも効果はありません。

誰だって、会うたびに自分の商品を売りつけようとする友達に会いたいとは思いませんよね?
あくまで自己紹介の文脈で、自分のオンラインビジネスを紹介するくらいの気持ちでいましょう。それよりもSNSはあなた自身の「意味」を伝達する媒体と考え、身近な人に伝える。あるいは共感し合える人と「友達になる」ための「場づくり」に徹したほうが効果的です。

そうしていくと面白いもので、SNSを通じたファンづくりができたり、ビジネスをより大きく広げるパートナーに出会ったりといったことが必ずできるようになります。

モバイルビジネス

基本になるのは「検索エンジン」からの集客

特に新規の顧客を集めたいと思うなら、オンラインビジネスの集客の基本はGoogle、Yahooなどの検索エンジンです。
なぜなら、広告のように無理やり見させられているのではなく、自ら探してあなたのサイトにたどり着くのですから、自然と顧客になる可能性が高い人たちが集まることになるからです。

そしてその鍵はやはり「自然と」というところです。
一昔前に流行った「SEO対策」で、検索エンジンの順位を無理やり上げてアクセス数が上がったとしても、それで来た人は顧客にはなりません。(ご存知のように現在のGoogleは、AIや量子コンピューティングの世界最先端企業であり、今まで言われてきたようなSEOテクニックはすぐに見抜きますので、小手先のテクニックでは順位上昇もできませんが。)

「意味」「魅力」を考えながらサイト構築をしていくと、最初のうちはSNSからの流入などの「力技」でアクセスを集めていたサイトも、自然と検索エンジンからのアクセスが多くなってきます。

例えば弊社のこのサイトの例でいうと、現在1日のページの表示回数(ページビュー)は平日で1,000PV前後ですが、そのうち約85%が検索エンジンからのアクセスです。たまに(1週間に1,2回)facebookで記事を紹介したりしていますが、そこからのPVはこの1週間で100くらいですので、全体の2%程です。

アクセス数

1日で1000人近くの方々にこのサイトに来ていただけるのは、このサイトの「意味」である俊敏な組織(Agility)、自律的な組織(Autonomy)づくりを拡めたいということ、そして今このカオスの時代に今回の記事も含めて内容が「魅力」的と思っていただいているからだと、改めて感謝しています。

激動の時代を生き抜くヒントになれば幸いです。

もちろん個別の相談も歓迎です。