デザイン思考 アジャイル

DXのためのデザイン思考とアジャイル

DX(デジタル・トランスフォーメーション)に必要な要素として、以前富士通の取り組みとしての「デザイン思考とアジャイルマインド」について書きましたが、このデザイン思考とアジャイルの関係についてここでは述べてみたいと思います。

以下で述べるように、デザイン思考とアジャイルは相互補完的な関係にあり、それぞれの手法を組み合わせることで、お互いの効果を高め合う、そのような関係にあります。

デザイン思考とアジャイルは「顧客中心」のメソッドという共通する目標があります。
今までの日本企業の取組は「製品中心思考」でした。

日本経済の牽引者であった家電や自動車産業などでは、欧米や国内のライバル企業の製品やサービスを分析し、より高性能で高機能にする、あるいはよそよりも高いサービスを提供することで売上を伸ばしてきました。

もちろんこの時代も、日本企業が顧客のことを考えてこなかったわけではありません。しかし、ここで言う顧客とは「大衆」のことでした。そしてその大衆が目指すものは、「もっと豊かな生活をおくりたい」というようなわかりやすい目標で、性別、年齢などでカテゴライズすればだいたい望む商品やサービスが予想できてしまう時代だったわけです。

そのような中で、「高機能」「高性能」といった製品やサービスの便利さばかりを追求した結果、TVや家電製品、携帯電話に象徴されるようにどのメーカーの製品を買っても変わらないデザインや機能となり、そして家電メーカーの多くは凋落していきました。

現在のように、人々は多様化し「(物質的に)豊かになる」という目標も喪失、そしてVUCAという言葉に象徴されるような先の読めない時代、私たちは「大衆」ではなく、一人ひとりに向き合わなければなりません。

そこで顧客一人ひとりと深く関わる「デザイン思考」「アジャイル」に注目が集まった背景があります。

デザイン思考とアジャイルの最強の組み合わせ方

デザイン思考とアジャイルは組み合わせて活用することで、それぞれの効果を高め、DXの推進や進化に役立てることができます。

デザイン思考は、下図のIDEOフレームワーク「共感」「問題定義」「創造」「プロトタイプ」「テスト」のような「5つのプロセス」で表されます。

 

IDEOフレームワーク

 
ただ誤解されやすいポイントでもあるのですが、これは「ウォーターフォール」のように順番に行うわけではなく、あくまで「思考の流れ」です。

デザイン思考に沿ったものづくりやサービス開発は、ブレインストーミング(及び他のデザイン思考の手法)とプロトタイピングを繰り返しながら、テストを重ねていくものです。
 

デザイン思考のプロセス

 

しかしながら、「デザイン思考ワークショップ」などに参加された経験のある方はご存知のように、ワークショップでは、プロセスの最初からプロトタイプまで順に一通りなぞる形が大半です。
これは時間の関係上仕方ないのですが、「繰り返し」ながら、プロトタイプを完成に近づけていくにはどうすればいいかというのは、残念ながら1日や数日のワークショップでは学ぶことは難しいかもしれません。

(私が学んだ慶應義塾大学大学院のシステムデザイン・マネジメント(SDM)研究科では、デザインプロジェクトという授業があって、ここでは半年近くをかけ、実際に企業や自治体などとプロジェクトやプロダクトのデザインを行います。2週間毎に提案書やプロトタイプをつくって評価(ダメ出し)を受けながら繰り返しプロトタイプやテストを行うことを学びます。)

アジャイルの手法のひとつである「スクラム」では、この繰り返しの手法が、体系的にメソッド化されています。毎日の「デイリースタンドアップ」や、スプリントの最後に行う「スプリントレビュー」「レトロスペクティブ」という評価や振り返りのメソッドです。

デザイン思考にもこれらを組み込むことで、効率的に「繰り返し」そして顧客のために最適化されたプロトタイプを産み出すことができるようになります。
  
 

スクラムのフレームワーク

 
一方のアジャイルの側でも、デザイン思考を組み込むことによるメリットは大きいと思います。

アジャイルに対する誤解のひとつとして「アジャイルは設計(要件定義や要求仕様など)を行わない」というものがあります。
当然のことながら、アジャイルでも「計画」「設計」は必要です。ウォーターフォールモデルとの大きな違いは、計画や設計の有無ではなく、設計されたものは変えないことが前提なのか、状況により積極的に変えていくかという違いです。
だからアジャイルでもビジネスやシステムの計画や設計を行うことは重要ですが、この部分において、アジャイルの手法ではあまり詳細には触れられていません。

XP(エクストリーム・プログラミング)やスクラムでは、「ユーザーストーリーからバックログをつくる」とされています。
しかしどうすれば(顧客自身も気づいていない)ユーザーの要望や要求をストーリーにするか、またそのユーザーストーリーをどのように「ビジネスモデル」や「システム」に落とし込むのか、アジャイルの手法は教えてくれません。

ここで、デザイン思考を組み入れることが必要になってきます。
このようにデザイン思考とアジャイルの組み合わせによって、お互いを保管することができ、「顧客中心」のビジネスモデルやシステムを構築し、DXを推進する大きな力を得ることができると考えます。
  

デザイン思考×アジャイルによるDXの進化

なぜ、デザイン思考とアジャイルの組み合わせが、DX(デジタル・トランスフォーメーション)を加速することになるのか。

トランスフォーメーションとは「企業を進化」させることです。
そして「進化」とは、ダーウィンの言葉にもあるように、環境の変化に対応しながら変化し続けることです。

生物のように、外部環境、即ち顧客中心に考えながら、アジャイル(柔軟・俊敏)に進化する。
デザイン思考とアジャイルによってDXが進化する理由がここにあります。


   

ICONIX for Business Design

このデザイン思考とアジャイルを組み合わせて、ビジネスやシステムを構築するために、弊社が開発したのが、「ICONIX for Business Design」です。

アジャイルの設計手法である「Agile ICONIX」をビジネスデザインに応用し、ユーザーストーリーなどからビジネスモデルを構築し、ビジネスのデザインや、アジャイルのタスク設計などに落とし込むこともできる、柔軟なフレームワークです。
このフレームワークの論文が2021年の日本ビジネスモデル学会誌に掲載されました。
 
「ICONIX プロセスを活用したビジネスモデル設計のダイアグラム連携手法」
 
DXの推進や日本のビジネスの躍進の一助になるよう、ワークショップなどで普及を図っています。 
 

ICONIX for Business Design

 
 
日本能率協会主催「DX時代に求められる「3つの思考法」入門セミナー」開催