稼ぎ続けるための戦略「ダブルハーベスト」

ダブルハーベストとは、先日発売された『ダブルハーベスト 勝ち続ける仕組みをつくるAI時代の戦略デザイン』(ダイヤモンド社)で提示された戦略デザインです。
本の中では「ただ稼ぐのではなく、何重にも稼ぎ続ける。次なる時代の勝ちパターン」あるいは「ベゾスがAmazon創業前にメモ書きした『戦わなくても勝ち続けてしまうループ』」と紹介されています。

『ダブルハーベスト』(ダイヤモンド社)

ダブルハーベストの考え方や、ハーベストループをビジネスに活用したAmazonやテスラなどの事例については、「DXやAI活用の鍵を握るダブルハーベストループとは」で述べたので、こちらをご覧いただくとして、ここでは、その仕組みについて、私なりに詳しく述べていきたいと思います。

ダブルハーベストループは自己強化ループ

ダブルハーベストとは、収穫(ハーベスト)が次の収穫につながる仕組みのことです。収穫(成果)が、次の収穫の元(原因)になるような仕組みです。

「ハーベスト(実り・収穫)」の元の意味に沿って、米作りのような農業で考えてみましょう。
春に植えた稲の種から茎や葉が育ち、秋にお米が収穫できるようになりますね。
これを限りなくシンプルに描くと下記のようになります。


 
ここで終われば、その一回だけのビジネスですが、この収穫した種(お米)は、また次の年の種となってそれがまた次の収穫に繋がります。


 
このようなループ構造がダブルハーベスト(多重収穫)であり、そしてこのループのことを、この書籍ではダブルハーベストループ(ハーベストループ)と呼んでいます。

これはシステム思考でいう因果ループ図の自己強化ループ(Reinforcing Loop)と同じですね。

このようなループ構造を描くことで、指数関数的なビジネスの成長を目論むことができ、実際に成功した事例が、上にも説明したAmazonを始めとするGAFAや、テスラ自動車のビジネスモデルです。

特にAmazonの場合、起業前のジェフ・ベゾスがレストランで友人たちにビジネスモデルを説明するため、その場で紙ナプキンに書いたループ図が公開されていて、この事例が様々なところで取り上げられているというわけです。

アマゾン戦略1

ベゾスが紙ナプキンに描いたループ図

 

ビジネスモデルがうまくいかない原因もループにあり

ところがダブルハーベストループ(ハーベストループ)を描くことができたとしても、そのように実際にループが回るとは限りません。

特に現実の社会やビジネスでは様々な要因で、「想定通りにいかない」のが普通です。そうした場合多くの経営者は、「たくさんの資源(リソース)を投入する」あるいは「営業にハッパをかける」などの方策を取るでしょう。つまりこれは「ループが回るように力を入れる」ということです。

しかし、多くの場合この方法ではうまくループは回りません。それどころか、資源の浪費で収益が悪化したり、現場への圧力で「ブラック企業化」して、組織全体が疲弊してしまうというのもよく見られます。

これも先程のループ図で表すことができます。

先程の稲の収穫のループで見てみます。
実はこのループの後ろには、別のループが隠れています。
植物が成長すればするほど、土壌からリンや窒素などの栄養分を吸い取ります。つまり先程のループが回れば回るほど、土壌がやせ細っていくことがわかります。(図中の(+)はプラスの影響、(ー)はマイナスの影響を与えるという意味の記号です。)

下図を説明すると、「収穫」が増えれば増えるほど、「土壌の栄養分」にマイナスの影響を与える。この「土壌の栄養分」は「収穫」にプラスの影響を与えるのですが、その「収穫」が増えることが、土壌の栄養分を減らすので、「収穫」は一定以上伸びないということです。


 
このようなことは、実際のビジネスモデルでも頻繁に起きています。
例えば、良いサービスが顧客に支持されて評判のお店が、顧客が増えたおかげで、従業員の対応が限界となり、それがサービスレベルの低下を招いて不評が立つようになったという話とか、よく聞く話ではないでしょうか。

これを解決するためには、左側の「ダブルハーベストループ(自己強化ループ)」の強化をするのではなく、右側のブレーキを掛けているループ(システム思考では『バランスループ』と呼ばれます。)に着目する必要があります。
例えば、対応策としては、料金を上げて収益を確保しながら顧客数を減らすとか、裏側のオペレーションにITを導入して従業員の負担を減らす、などの策が考えられるでしょう。

ループがうまく回らないときは、アクセルを踏むよりも、ブレーキを緩めるという考え方が有効の場合が多いです。
しかし、どこにブレーキがあるのか見つけるのは簡単ではありません。そこで上記のようなループ図を描いてみて、ビジネスモデルの構造を「可視化」する作業が有効なのです。

課題を解決し、ビジネスを伸ばすシステム思考

上記のようにループ図を描くことで、ビジネスあるいは社会の課題を解決し、良いところを伸ばすしていくための思考法が、システム思考です。

システム思考はMITのジェイ・フォレスター、ドネラ・メドウズ、ピーター・センゲなどの長年の研究で体系化され、ビジネスや組織の問題、最近では地球温暖化対策など社会問題の解決などにも欠かせない思考法となっています。(1960年代末に、世界で初めて経済発展によって地球環境が限界に近づいていることを明らかにしたのが、フォレスターやメドウズのシステム思考に基づくシミュレーションです。このシミュレーションデータを基にローマクラブが「成長の限界レポート」を発表し、そこから「環境問題」「資源問題」が世界共通の課題であることが認識されるようになったことは、よく知られています。)

限りない成長を生む原動力となると同時に、そこから生まれる課題解決をすることができる。私たちのビジネスにシステム思考を取り入れることが、ダブルハーベスト(多重収穫)を生み出す仕組みづくりの秘訣となるのは間違いないことだと思います。